「空瓶通信」開設趣旨

「空瓶通信」開設趣旨

ニュージーランドのオークランドの港に碇泊していた帆船は、岸壁につなぎとめていた艫綱が解けて嵐の海を漂流し、南米チリの沖に散在する群島のひとつ、ハノーバー島に吹き寄せられるように漂着する。漂着 した少年たちは、そこで20カ月にわたってさまざまな困難を克服し、それぞれに成長していく。ジュール・ヴェルヌの小説『十五少年漂流記』は、少年であった私の心をつかんだ。彼らは自分たちが生きていることを知らせるために、瓶につめた手紙を流し、居場所を知らせるために燕に手紙を託して飛ばした。この挿話は私を魅了した。わが故郷、九州の久留米には筑後川が流れており、有明海に注いでいる。その先には太平洋が広がっている。うまく黒潮にのれば、太平洋沿岸のどこか知らない町に瓶に入れた手紙は流れ着くのではないか。小学校6年生であった私は、意を決して市内瀬の下町の水天宮の突堤から小さな薬瓶に入れた手紙を流した。「コノ手紙ヲ見ツケタ人ハ返事ヲ下サイ」。数日後、返事が来た。私が瓶を流した場所から2キロメートル下流で釣りに来ていた理髪店主が、それを見つけて返事をくれたのだ。思いがけず見つけてくれた驚きと、「たった2キロだけ下流か」という思いが交錯してことを覚えている。後年、ものを表現することを覚えてしばしばこのことを思い返す。ものを表現したいという欲求は、必ず他者とコミュニケーションしたいという欲求に根ざしている。本サイトの目的は、そのようなものであり、この初心を忘れないために記しておく。

近藤洋太略歴